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外れ馬券の払い戻しに係る課税の取り扱いについて

2015年8月4日 火曜日

    外れ馬券訴訟につき、平成27年3月10日最高裁が「被告人である元会社員が購入した馬券の払戻金に係る所得は雑所得、外れ馬券を含めた全馬券の購入費用を必要経費として控除できる」と判断し、検察側の上告を棄却したことで確定したことを受け、国税庁は平成27年5月29日「所得税基本通達34-1」の改正を行いました。

1 従来の取扱い
 競馬の馬券の払戻金等については、払戻金を得るに当たって行った、馬券購入行為の態様や規模等にかかわらず、一律に「一時所得」として取り扱っていました。
その一時所得の金額は、次の算式で計算され、総所得金額を計算する場合には、一時所得の金額の2分の1が、他の所得と総合されます。

     総収入金額ーその収入を得るために支出した金額の合計額ー特別控除(最高50万円) 

 この計算式のなかで、問題となるのが「その収入を得るために支出した金額」です。
それは、1レースごとに区分し、払戻金を得たそのレースの購入費用をいいますので、外れ馬券の購入費用は、払戻金がないため「その収入を得るために支出した金額」に含まれないことになります。

 例えば、10万円で第1レースの馬券を買い、150万円の払戻しを受け、その払戻金全額で第2レースの馬券を購入したが外れ、所持金は0円になったとします。
 
 この場合、第2レースの購入費用150万円は外れ馬券となるため、第1レースだけで計算し、払戻金150万円から購入費用10万円を差引き、50万円の特別控除後の金額90万円が一時所得の金額となり、その金額の2分の1である45万円が他の所得と総合されることになります。

 
2 通達改正の概要等 (所得税法第34条第1項、所得税基本通達34-1)
  次の条件を満たす場合の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当するとされました。満たさない場合は従来通り一時所得となります。

①馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基いて
②インターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、      
③一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合

  上記の条件を満たし雑所得に該当するする場合、上記設例は払戻金150万円から、第1レースの購入費用10万円と第2レースの購入費用150万円の合計160万円をを控除し、雑所得の金額はマイナス10万円となります。但しこのマイナス10万円は他の所得と通算することができません。

通勤手当の非課税限度額が引き上げられました

2014年12月11日 木曜日

 この度、所得税法施行令の一部改正が行われ、自動車等の交通用具を使用している給与所得者に支給する
通勤手当の非課税限度額が、通勤距離の区分に応じて次のように引き上げられました。

           通勤距離         改正前               改正後
    片道 2キロ未満            全額課税     全額課税
  
       2キロ以上10キロ未満       4,100円    4,200円
       10キロ以上15キロ未満    6,500円    7,100円  
       15キロ以上25キロ未満   11,300円   12,900円
       25キロ以上35キロ未満   16,100円   18,700円
       35キロ以上45キロ未満   20,900円   24,400円
       45キロ以上55キロ未満   24,500円   28,000円
       55キロ以上         24,500円   31,600円

 注1. この改正後の非課税限度額は、平成26年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(同時以後の
    通勤手当の差額支給分を含む)について適用されます。

  2. 既に支払われた通勤手当のうち、課税対象となっていた金額について、新たに非課税とされる部
    分の金額が生ずることにより過納となる税額の精算は、本年の年末調整の際に行うこととなります。

  

事業承継対策

2014年10月2日 木曜日

 本日、独立行政法人 中小企業基盤整備機構による「事業承継セミナー」の研修を受けてまいりました。
中小企業白書(2006年版)によれば、年間29万社の廃業のうち、後継者不足を第一の理由とする廃業が7
万社、雇用の喪失は毎年20万~30万人に上るとされており、日本経済を支える中小企業の雇用や技術の喪失
といった観点から、事業承継問題がクローズアップされています。
 特に近年、中小企業経営者の高齢化が進展しており、これは後継者難が増加していること、平均寿命上昇や事
業承継時期の遅れにより社長在任期間が長期化していることが原因と考えられます。

もし事業承継対策をしないと、様々の理由で経営が不安定になり、事業承継が困難となってしまします。
代表的なケースを紹介しますと、
 ①長男を社長にしたにも関わらず、なかなか経営権を委譲しなかった。
 ②創業者が、事業承継に関して何の対策も行わなかったため、事業の承継すら危ぶまれる事態に陥った。
 ③相続予定者のなかに意思の疎通が図れなかった人物が存在していたにも関わらず、十分な生前贈与や遺言の
  作成がされなかったため、後継者に事業用資産の集中ができなかった。
 ④自社の魅力(製品に対する魅力等)を後継者に承継できなかったため取引先と有効な関係を築けなかった。

<そもそも事業承継とは?>
 事業承継とは、”現経営者から後継者へ事業のバトンタッチを行うこと” 
 企業がこれまで培ってきた様々な財産(ヒト、モノ、カネ、知的財産)を上手に聞き継ぐことが、承継後の経
 営を安定させるために重要となります。
 

  ①人の承継 (ヒト)      後継者
  ②資産の承継(モノ、カネ)   自社株式、事業用資産(設備、不動産等)、資金
  ③目に見えにくい経営資源の承継(知的財産) 
              経営理念、社長の持つ信用、営業秘密、特許・ノウハウ、熟練工の持つ匠の技、
              得意先担当者の人脈・顧客情報、許可・認可・認証

<事業承継対策の進め方>
 (1)まず、現状を把握します
  ①会社概要の把握   従業員数、資産、キャシュフロー、知的資産、負債、
              会社の競争力の現状と今後の見込み
            
  ②株主、親族関係の把握
  ③個人財産の概要把握 保有自社株式、個人名義の土地・建物、個人の負債・個人保証等

 (2)次に、後継者・承継方法を確定します。
  ①親族内後継 現経営者の子息。子女が後継者となるケース
  ②親族外承継 共同創業者、番頭格の役員、優秀な従業員等が後継者となるケース
  ③全くの第三者(M&A)
 
 
   

 (3)事業承継の時期、具体的な対策を盛り込んだ「事業承継計画表」を作成します。

<事業承継税制>
 事業承継税制とは、中小企業の後継者が、現経営者から会社の株式を承継する際の相続税・贈与税の軽減制度
 で、平成25年の税制改正で非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度が拡充され、活用しやすくなりまし
 た。改正のポイントは、
 (1)平成25年4月より、経済産業大臣の事前確認を受けなくても制度利用が可能となりました。
 (2)平成27年1月より
  ①後継者は現経営者の親族に限定されていましたが、適任者を後継者にすることが可能になりました。
  ②雇用の8割以上を5年間毎年維持とされていましたが、5年間平均で8割となりました。
  ③現経営者は贈与時に役員退任が要件とされていましたが、代表者の退任だけで有給役員として残留可能
   となりました。 などなど
  *事業承継対策については改めて紹介したいと思います。

  
 

 
 

 

  

 
 

 

 
 
 

所得税の確定申告は、必ずしなければならないのか?

2014年1月13日 月曜日

本年も確定申告の時期となりましたが、「開業したばかりなので、確定申告はしなくてもいいですか?」という
質問を受けることがあります。所得税の申告は働く働かないとか年齢等には全く関係なく、仮に小学生であって
も納付税額が生ずる場合は原則として確定申告しなければならいないこととなっています。但し、給与所得者や
年金所得者が一定の要件に該当する場合は、確定申告が不要となる場合があります。

1.確定申告をしなければならない場合
 ①その年の所得の合計額>所得控除の合計額の場合において、所得税の額>配当控除+住宅取得等特別控除。 
   つまり配当控除び住宅取得等特別控除前で、納付すべき所得税額があるときは確定申告が必要となります。
 ②その年の給与収入>2,000万円(年末調整できないため)

2.確定申告を要しない場合
  本来は上記1の規定により確定申告をしなければなりませんが、次に該当する場合は原則として確定申告不
    要です。
 ①給与収入が2,000万円以下の給与所得者で給与所得と退職所得以外の所得金額が20万円以下の者など
 ②公的年金等の収入金額400万円以下で、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の者。

3.なお、本来は確定申告をする必要はありませんが、確定申告をすることで還付を受けること等ができます。
 ①年末調整で控除できない雑損控除、医療費控除、寄附金控除、住宅取得等特別控除の適用を受ける場合。
 ②その年の翌年以降において純損失の繰越控除、雑損失の繰越控除や純損失の繰戻し還付の適用を受ける場合。

*所得税法上、開業したばかりで納付する所得税が発生しない場合は確定申告する必要はありませんが、損失が
    生じた場合は確定申告(青色申告に限る)することにより、その損失を翌年以降3年間の所得と相殺するこ
 とができますし、ほ かにも融資のためなど、確定申告することのほうが得策になると思います。